コミュニケーションロボット、介護、リハビリなど最新ジェロンテック事例
クラウドデータ、システムデータ、リーガルデータ、AIデータなどのデータアセットマネジメント事業を展開するAOSデータ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長 春山 洋 以下AOSデータ社)は、ジェロンテック分野のDXおよびAI活用の推進を目的に、「ジェロンテックxAI/DXデータフォーラム」を2023年9月6日に開催いたしました。
超高齢社会先進国である日本のヘルシーエイジング事業への社会的関心の高まりを受け、本フォーラムも熱心な視聴者のご参加をいただきました。本レポートでは、フォーラムの抄訳をお届けします。また、本フォーラムの動画はこちら:https://www.aoswebinar.com/@gerontechで公開しております。
「ジェロンテックxAI/DXフォーラム」では、東京大学先端科学技術研究センター 研究顧問/名誉教授 伊福部氏、SOMPOインスティチュート・プラス、株式会社Z-Works、株式会社テクリコ、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所、ユカイ工学株式会社、株式会社テムザック、株式会社ニッセイ基礎研究所にご登壇いただき、最先端のDX推進やAI活用の事例を発表いたしました。また、実際のジェロンテック製品を体験することができる「体験会&名刺交換会」も開催、好評をいただきました。
▲ ジェロンテック体験会で展示された、ユカイ工学株式会社のコミュニケーションロボット製品「甘噛みハムハム」と、ボディを撫でると反応してしっぽを動かす、累計3万匹超の実績をあげている「Qoobo」シリーズ
▲ 次世代型電動車イスでありスマートモビリティである株式会社テムザック「RODEM」のブースでは、開発秘話などが詳しく語られた動画が展示されました。また、同社代表取締役議長 髙本氏や常務取締役企画本部長瀬戸口氏らによる説明が行われ、盛況を博しました。
■「Data to AI企業へ」 AOSデータ株式会社 AI・DXデータ事業部長 五十嵐 司
データのライフサイクルマネジメントと品質向上、リスク管理の重要性の啓発を行い、日本のDX推進に貢献するため、AOSデータ社は「お客様のデータと共に」という理念のもと、各業種の先進企業のDX推進やAIデータの活用事例、リスクマネジメント事例などをご紹介する「産業DX/AIデータフォーラム」を企画しています。
2023年8月には「ジェロンテックカオスマップ2023版」(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000292.000040956.html)を発表、ジェロンテック産業のDX推進をサポートし、また今後も強化してまいります。
世界に先駆けて超高齢社会に突入した日本において、良い技術および思いやりの心を大切にしながら、高齢者の未来を皆様と共に開いて参りたく邁進していきます。
■「高齢社会を豊かにする技術とシステム -JSTのプロジェクトを例に-」
東京大学・先端科学技術研究センター 研究顧問/名誉教授 伊福部 達 氏
国立研究開発法人科学技術振興機構(略称JST)における「高齢社会を豊かにする技術とシステム」をテーマとした研究成果を中心に、講演をいただきました。
伊福部氏は、人工心臓などの生命維持を主とする医療工学の研究から、障害があっても高齢になっても過ごしやすい生活空間づくり、さらに高齢でも社会参加し自力で収入を得るジェロンテック市場が将来必要になると考え、福祉工学の研究に重点をおきしました。
高齢者は身体的フレイルと社会的フレイルの2つのフレイルによって、さまざまな機能低下が生じてきます。それらを補うICTや生活支援ロボットによって、行動達成率の上昇や心理的安定などの効果が実証されています。
JSTでは次の4つの課題を採択し、10年間にわたり研究を推進してきました。①軽労化スーツ:高齢社会での自立生活支援のための軽労化技術の研究開発と評価システムの構築(北海道大学、三菱EE)、②生活支援ロボット:高齢者の記憶と認知機能低下を支援する生活支援ロボットシステム(国立リハセンター、NEC)、③自律運転システム:高齢者の自立を支援し安全安心社会を実現する自律運転知能システム(東京農工大学、トヨタ自動車)、④高齢者クラウド:高齢者の経験・知識・スキルを社会の推進力とするためのICT基盤「高齢者クラウド」の研究開発(東京大学、日本IBM)などの研究開発を行いました。
社会実装した仕組みとして、シニア人材活用に関して、2つのモザイク就労事業があります。一つ目は株式会社サーキュレーションが実用化した人材検索システム「人材スカウター」で、求人者がニーズにあった最適な人材を可能な限り早く発掘するインターフェースです。もう一つは柏市などで実証化している「GBER」(Gathering Brisk Elderly in the Region)で、これは地域コミュニティの中で社会参加を希望する高齢者の誰もが利用できるインターフェースであり、柔軟な働き方をサポートする地域活動マッチングシステムとなっています。
生活支援ロボット、自律運転システム、高齢者クラウド、これらのシステムを有機的に活用し、日本の超高齢社会に向けて産学官が連携し、国も人も豊かにする技術・システムを開発し実装することにより、マイナス課題をプラスに活かす道を見出すことが急務です。
■「ジェロンテックへの期待とSOMPOの取り組み」
SOMPOインスティチュート・プラス 主任研究員 岡島正泰 氏
SOMPOインスティチュート・プラスは、保険会社であるSOMPOグループのシンクタンクであり、保険市場のほか社会保障・ヘルスケアなどに関する動向の調査も行っています。
ジェロンテックによる支援が期待される高齢者の属性は非常に多様であり、高齢者ごとの様々なニーズに応えていく必要があります。またジェロンテックの支援対象としては高齢者本人のみならず、高齢者の生活を支える家族等や、シニアへのサービスをコーディネートする専門職への支援も求められます。
さらに高齢者支援が必要な領域としては、医療・介護だけでなく、経済、仕事、社会、生活、感情面なども挙げられます。日本の介護サービスは世界に類を見ないネットワークと規模を持つ一方で、介護人材の需給ギャップは拡大し、2040年までに介護人材を約69万人増やす必要があると試算されており、業界全体の構造的課題として危機を迎えています。
そういった背景を踏まえジェロンテックに関するSOMPOの取り組みとして、介護リアルデータプラットフォーム「egaku」を開発しました。「egaku」はSOMPOケアで蓄積された数億件のビックデータを活用し、将来予測と最適なケアプラン提供などによって、介護職員の働き甲斐の醸成や生産性の向上を実現し、需給ギャップ解消を目指します。地域包括ケアシステムの要として、行政・医療・介護の三位一体のデータ活用に貢献し、在宅介護サービスにおいてもデファクトスタンダードとなることを目指し、持続可能な介護の実現に貢献していきます。
■「介護現場のDX戦略」株式会社Z-Works 創業者 取締役 小川 誠 氏
株式会社Z-Worksは、介護を取り巻く現実的な課題へのソリューションをベンチャー企業の立場から提供しています。
まずZ-Worksが開発した複数のセンサーを組み合わせて使用することで介護現場の可視化を実現します。Z-Worksが開発したバイタルセンサーは、肌が弱いシニアに配慮しベッドの下に設置できるタイプになっており、心拍数や呼吸、睡眠状態などをモニタリングします。身体的に弱くなっていくシニアに応じた感度調整や、ペースメーカーに干渉しないなど介護現場に特化したセンサーとなっています。
さらに、ベッドの人感センサー、夜間にシニアの事故が多いとされるトイレの人感センサー、ドアセンサーなどによって室内の様子や行動を把握します。介護現場は情報システム担当がいない場合や、Wi-Fiが入っていない施設が多いことに配慮し、Wi-Fiを使わない低コストで安定したネットワークを実現しました。また異常検知の通知機能によって、例えば離床行動やドア開閉などさまざまな事項に関して通知を設定でき、さらにお亡くなりになる数日前の「看取り通知」によってご家族への連絡や職員の看取り準備などを支援します。介護人材不足への支援として、遠隔からのモニタリングを可能にする「ライブコネクト」によって、定期巡回作業にかかる時間を100分短縮させるなど、現場の負担軽減に貢献しています。
■「xRリハビリテーションの現状とジェロンテックとしての可能性」
株式会社テクリコ 代表取締役 杉山 崇 氏
株式会社テクリコは、テクノロジーでリハビリを楽しくし、超高齢化社会が抱える問題解決に貢献するため「xR リハビリテーション」に取り組んでいます。xRとはVR・AR・MR等の総称になりますが、それらの違いについては次のように考えられています。VRは仮想現実であり、現実とは完全に別世界に没入するイメージです。ARは拡張現実と呼ばれ、現実にCGを付加します。MRは複合現実とも呼ばれ、現実とCGを融合します。
テクリコは、メディカルヘルスケア分野におけるソフトウェア・システムの研究開発や製造、販売を行うヘルステック企業として、MR(複合現実)技術を活用したリハビリテーション治療システムを関西医科大学と共同研究しています。現実世界でゴーグル越しにCGのトレーニングメニューを投影させることにより、日常生活に近い三次元空間でのリハビリが可能で、高いリハビリ効果が期待できるトレーニングアプリ「リハまる」を医療現場等に提供しています。
■■「生活を見える化する −ウェアラブルデバイスを装着する高齢者の声−」
地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム研究員 今村慶吾 氏
東京都健康長寿医療センター研究所の福祉と生活ケア研究チームでは、高齢者の生活機能、精神的健康状態、生活の質、そして生活環境向上に関する研究と社会への成果還元に取り組んでいます。
近年、ウェアラブルデバイスを活用した健康づくりが注目を集めています。また健康管理に関するアプリケーションも多数開発されている一方で、それらのエビデンスとしてはまだ十分に構築されていないという現状もあります。
同研究所では、2022年度から「高齢者の健康づくりに資するスマートウォッチ等デジタル機器活用事業」を行っています。デジタルデバイスを通して収集したヘルスケアログと、実際の健診で得られたアウトカムデータをコホートデータとして収集・分析を行い、AIによる予兆検出アルゴリズムを開発し、ウェアラブルアプリへの実装を目指します。
これまでのウェアラブルデバイスを実際に使用した高齢者へのアンケート調査では、高齢者がウェアラブルデバイスに期待する点として機器の装着感、見た目、アプリケーションの利便性、データ解釈の容易さなどが挙げられました。今後、広く高齢者にウェアラブルデバイスを利用してもらうためにはアプリケーションの機能だけでなく、装着感や見栄えにも配慮したデバイスも重要であることが示唆されました。
■「ジェロンテックにData to AIエンジンを実装せよ! データプラットフォーム AOS IDX」
AOSデータ株式会社 取締役 志田大輔
高齢社会のフロントランナーとして日本の動向は世界から注目されています。ジェロンテック分野に関連する膨大なデータは大まかに次の3分野が重要だと考えています。すなわち介護分野から介護インテークツール、金融分野から金融ジェントロジーツール、健康分野からヘルスケアツールを通じて集められるデータです。日本独自の強みを生かし、シニアの健康と生活支援への高い需要を叶えていくために、これらの膨大なデータの活用を可能にするテクノロジーが必要になります。
AOSデータでは、ジェロンテック業界のデータを統合管理するジェロンテックデータプラットフォーム「AOS IDX」を提供しています。これらの分野に関する豊富なデータは、非常に有用であると同時に、その管理にはリスクも伴います。APIによってそれらの各ツールと連携した上で、「AOS IDX」によって情報を安全に保護・保存、そして共有が可能になります。「Data to AI」のコンセプトのもと、ジェロンテック環境のDXを「AOS IDX」によってご支援してまいります。
■「コミュニケーションロボットが拓くユカイな世界」 ユカイ工学株式会社 代表取締役 青木俊介 氏
ユカイ工学は、コミュニケーションロボットの自社開発や、法人の新規事業開発支援として受託による製品・サービス開発、生活者向けのユニークなプロダクトを企画開発するプロダクト事業等を行い、人生をより豊かにするユカイで新しいライフスタイルを提案しています。特にジェロンテック分野に関するものでは、家族をつなぐコミュニケーションロボット「BOCCO」シリーズ(累計1万台超)、「Qoobo」シリーズ(累計3万匹超)、「甘噛みハムハム」などのロボティクスを展開しています。
「BOCCO emo」では国土交通省や呉市など官公庁などと連携し、シニアの服薬支援で重症化予防に活用している事例もあります。三重県鳥羽市では離島のシニアの見守りにロボット活用する実証実験を行いました。東京のセキュリティ会社のスタッフが、ロボットを通じての定期的な声掛けや、高齢者の動きをセンサーで把握し、必要に応じて離島内にいる集落支援員に訪問をしてもらうことも可能です。シニアドライバーに対してロボット活用で安全運転支援をおこなう名古屋大学の研究においても「BOCCO emo」は活用されています。
累計3万匹超の実績をあげている「Qoobo」シリーズは、ボディを撫でると反応してしっぽを動かすほか、心音を感じさせるモーターを搭載した癒しロボットであり、海外メディアでも紹介され国内外で注目されています。動物や人間の赤ちゃんの甘噛み動作を再現したロボット「甘噛みハムハム」は、多数のメディアで紹介されています。子育てを終え、新しくペットを飼い始めることも難しいシニア世代には、子育ての懐かしい記憶を思い出すということで喜ばれています。さらに新しいプロダクトとして「fufuly」という呼吸をするロボットクッションの開発も行っています。
■「WORKROID WE CREATE ~新しい発想でつくる、ロボットとともにある未来のカタチ~」
株式会社テムザック 代表取締役議長 高本陽一 氏
株式会社テムザックは、世界でも数少ないサービスロボットの開発を行うロボットメーカーです。日本では少子高齢化のため労働力不足時代が到来することが予測されており、2040年には1100万人の供給不足が生じると試算されています。現在も例えば建設現場は高齢化が進み、55歳以上の作業員が多いなど平均年齢が上昇しています。
農業においても高齢化や担い手不足が指摘されています。
そのような未来に、労働力不足への解決策、また危険作業から人を守ること、人ができない作業を実現するため、空間を自律又は遠隔操作で移動し労働の代替を行うサービスロボットを開発しており、これを「ワークロイド」と呼んでいます。
さらに、九大医学部からお伺いした福祉課題への解決策として、「RODEM」という次世代型の電動車イスを開発しました。「RODEM」の特長は、車イスとしてだけでなく、歩行機能に問題のない健康な人も次世代スマートモビリティとして使用できる点です。テムザック社は産学共同開発による強力なネットワークを確立しており、国内外の大学研究所や企業、機関と提携し共同開発研究を行うことで、大型研究施設と同等以上の開発力を発揮し、多種多様なロボット開発を実現しています。
■「超高齢”未来”の社会課題と市場開拓視点~デジタル活用の期待」
株式会社ニッセイ基礎研究所ジェロントロジー推進室・上席研究員 東京大学高齢社会総合研究機構 客員研究員
前田展弘 氏
ニッセイ基礎研究所では、高齢化する日本の未来を見据え、いち早くジェロントロジーの重要性を理解し2001年よりジェロントロジー研究に着手しました。世界に先駆けて高齢化が進展する日本では、高齢化に伴う社会課題を放置すると、働けないシニアの地域社会への停留、不健康・貧困シニアの増加、自立生活困難シニアの増加、地域を支える人材の枯渇により地域の持続性が危ぶまれる、などの問題が広がり、経済発展の低迷にもつながりかねないおそれがあります。
将来的には日本は高齢者4割、現役世代5割、子ども1割の人口構造になることが予測されており、社会や市場の創り直しが求められています。時代の過渡期において、高齢者4割社会をいかにデザインし、いかに人生100年時代のライフデザインを創造するかが問われます。高齢期の生活課題の解決、生活ニーズに応える市場の開拓は必須です。
持続可能な超高齢社会、豊かな長寿の実現に必要となるのが「商助」です。そのためにアカデミア技術の世界で何ができるのか。この問いに応えるべく、新たな長寿価値「貢献寿命」を社会に広く提唱する取り組みを行なっています。貢献寿命延伸に向けてシニア向け就労・貢献活動の選択肢を広げるべく、ICTプラットフォーム「GBER」の地域実装を企図しています。加齢(長寿)に価値と希望のある社会を実現し、超高齢・長寿大国として世界のモデルケースとなることで、安心で活力ある長寿社会に貢献していきたいと考えています。
【AOSデータ株式会社(https://www.aosdata.co.jp/)】
代表者:春山 洋
設 立:2015年4月
所在地:東京都港区虎ノ門5-1-5 メトロシティ神谷町ビル4F
資本金:1億円(資本準備金15億2500万円)
AOSデータ社は、データ管理技術で知的財産を守る活動を続けており、企業7,000社以上、国内会員90万人を超えるお客様のデータをクラウドにお預かりするクラウドデータ事業、20年に渡り100万人以上のお客様の無くしてしまったデータを復旧してきたデータ復旧事業、1,300万人以上のお客様のデータ移行を支援してきたシステムデータ事業で数多くの実績を上げてきました。データ移行、データバックアップ、データ復旧、データ消去など、データのライフサイクルに合わせたデータアセットマネジメント事業を展開し、BCNアワードのシステムメンテナンスソフト部門では、12年連続販売本数1位を獲得しています。
また、捜査機関、弁護士事務所、大手企業に対して、証拠データの復元調査や証拠開示で数多くの事件の解決をサポートした技術が評価され、経済産業大臣賞を受けたグループ企業のリーガルテック社のリーガルデータ事業を統合し、今後一層、データコンプライアンス、AI・DXデータを含めた「データアセット マネジメント」ソリューションを通して、お客様のデータ資産を総合的に守り、活用できるようにご支援することで、社会に貢献いたします。