ものづくり企業や、商工会議所のDX最新事例が導く“Japan as No.1 Again” データに基づくサービス化が、日本の製造業復活の鍵
1、製造業DXサービタイゼーションのコラボセミナー概要
2、サービタイゼーションの鍵は、「データ集積と活用」
「データを制するものがDXを制す~製造業のサービス化(サービタイゼーション)を支える AOS Industry DXによるスマートファクトリーデータ基盤プラットフォーム~」
3.日本の製造業の8割がDX未着手?! デジタルツインによる投資対効果の可視化で解決
「デジタルツインによって実現する製造業DXとその価値」
4、メタ情報の付加や、AIを活用した標準化を通して、再利用可能なデジタル資産化
「製造業におけるデジタルアセット・マネジメントの考え方」
5.商工会議所が、ものづくり企業の世界への販路開拓と、データ集積と知財保護を推進
「鯖江モデル~自治体の商工会議所を起点とした地域のものづくりのサプライチェーンをつなぐ、新たな地域創生
の形~」
6.改善のコツは、人や機械の能力を引き出すこと。DXとは、“データ”と“能力”の掛け算
「電力も脱炭素も可視化する、新しいスマートファクトリーDX」
7.簡単に構築できる、コラボレーション可能なメタバース・プラットフォーム
「Metaverse Industry Use Cases」
AOSデータ社、代表取締役社長 春山 洋は、冒頭、本セミナーのテーマ「サービタイゼーション」の説明を行ないました。「サービタイゼーション」とは、製品をサービスとしてお客様に提供するビジネスモデルのことです。製造業では、製品を製造・販売する、いわゆる”モノ売り”が主流でしたが、製品を活用したサービスも含んだ形で価値を提供するビジネスモデルへシフトしてきています。
2.サービタイゼーションの鍵は、「データ集積と活用」
「データを制するものがDXを制す~製造業のサービス化(サービタイゼーション)を支える
AOS IndustryDXによるスマートファクトリーデータ基盤プラットフォーム~」
AOSデータ社、CTO 志田大輔より、「製造業のサービス化(サービタイゼーション)を支えるAOS IndustryDXによるスマートファクトリーデータ基盤プラットフォーム」について講演を行ないました。
産業革命から340年が経ち、今は第5次産業革命が始まり、デジタルツインによるサイバーとフィジカルの融合革命が進行しています。既存の製造業は、モノ売りからコト売りへの新しいビジネスモデルへの転換が求められています。
海外では、ロールスロイス、キャタピラー、Alstomなどのサービタイゼーションのビジネスモデルが注目され、日本でも製造業のサービス化(サービタイゼーション)の波が訪れています。サービタイゼーションを実現するためには、大量のデータを収集するIoT、収集したデータを解析するAIなどの高度なデジタル技術・先端技術が必要です。
そして、スマートファクトリーの中心にあるのが製造業における「データ」です。キーとなるデータを保存し、データ共有、データ活用を実現するインフラとなるのが、スマートファクトリーデータ基盤プラットフォーム「AOS IndustryDX」です。
「AOS IndustryDX」の活用によって、製造業のリアルデータを安全にクラウドで管理する、スマートファクトリーのデータ基盤プラットフォームを構築することが可能となります。
3.日本の製造業の8割がDX未着手?! デジタルツインによる投資対効果の可視化で解決
「デジタルツインによって実現する製造業DXとその価値」
株式会社FAプロダクツ 代表取締役会長 Team Cross FA プロデュース統括 天野 眞也氏は、「デジタルツインで実現する製造業DXとその価値」について、日本の製造業の現状の課題から、DXによる解決方法まで幅広くご講演されました。
日本の製造業の約8割がDXに未着手、とい調査結果が報告され、この解決策として提示されたのが、エキスパートと二人三脚でDXを推進していくことです。DXは、効果の測定が難しく、投資対効果が不明であるため投資の判断がなされず、結果実施されない、という悪循環に陥っています。これを解決する手法がデジタルツイン。工場の運用を最適化し、正確な未来予測を行なうことで投資対効果を導き出すことが可能です。
デジタルで情報がいきわたり、工場内にとどまらず、サプライチェーン全体を俯瞰で見る全体最適化の視野を得ることで、課題解決策を共有することができます。DXに抵抗を感じるのは、メリットを理解していないからです。成果と賞賛と報酬の関係性を明らかにすることで、モチベーションが向上し、優秀な人材の獲得にも寄与します。日本の製品は、世界中どこにいっても安心・安全と評価されていたものが、安い製品に一時は押されていましたが、再度、日本が製造業でNo.1になるチャンスがやってきました。
4.メタ情報の付加や、AIを活用した標準化を通して、再利用可能なデジタル資産化
「製造業におけるデジタルアセット・マネジメントの考え方」
株式会社ICMGグループ M&IT株式会社 代表取締役 田村 英二氏は、「製造業におけるデジタルアセット・マネジメントの考え方」について講演されました。
企業の価値を高めるためには知的資本を見る必要があり、人的資本の観点では、経営陣の経営判断能力や熟練工の技術力をデジタル資産化できているのか? という問いに答える必要があります。
デジタルアセットマネジメントとして、組織のデジタル資産を一元管理する手法、主にマーケティングや非業務系、オフィス業務で利用される手法として、汎用DAM(Digital Asset Management)があります。情報量や登場人物の多い製造業で、自社内、さらに得意先や外部のパートナーとの情報共有を効果的に行なうため、匠の技の継承、デジタル資産を連動させた活用、そして情報価値の活用に着目し進めます。
デジタル資産にメタ情報を付加して共有することで、デジタル資産が統合された形で蓄積されます。中小企業の例では、金型の定義がデジタル資産となり、仕様変更が行われた場合にどの情報が仕様変更され、誰が承認したかをDAMでデジタル資産化しています。多くのステップがある住宅を作る過程をデジタル資産として利活用できる形にするには、標準化が必要です。メタ情報を付加しながら統合する際に、AIを活用して標準化します。匠のノウハウを組み込むと同時に、アプリケーション、プロセス別にチューニングされたDAMとして情報を蓄積し、再利用できる資産となっていきます。
5.商工会議所が、ものづくり企業の世界への販路開拓と、データ集積と知財保護を推進
「鯖江モデル~自治体の商工会議所を起点とした地域のものづくりのサプライチェーンをつなぐ、新たな地域創生の形~」
鯖江商工会議所 CXO(Chief Experience Officer)/経営支援課課長 田中 英臣氏は、鯖江の商工会議所が取り組んでいる、「自治体の商工会議所を起点とした地域のものづくりのサプライチェーンをつなぐ、新たな地域創生の形」について講演されました。
鯖江商工会議所は、デザイン思考でイノベーションの創出を進めており、眼鏡の本格的なフェスティバルを開催した実績もあります。デザイン思考の取り組みを進化させ、眼鏡に加え、繊維や工芸品にまで拡大し、鯖江のクリエイティブ・コミュニティを作りました。その後新型コロナの感染が広がる中、中小企業のものづくりDXを推進するため、地下にyoutubeスタジオを開設、鯖江にいながらにして、海外に商品やサービスを提供する越境ECの仕組み「クロスボーダー鯖江」を開設しました。コロナ禍でリアルに展示会を開催できなくても、ECを活用して間接的に商品をアピールすることに挑戦しています。
さらに、ものづくり新時代の幕開けとして、眼鏡、漆器など33社を集めて、「MADEFROM」というバーチャル展示会イベントを開催。映像プロモーションも行い、鯖江のyoutubeスタジオで撮影した映像を配信、スマートグラスを活用して、XR体験ができるようにするなど、作り手の情報を簡単に発信できるシステムを作りました。
デザインやテクノロジーを組み合わせ、中小企業の販路創出の取り組みを行なうと同時に、NFT、ブロックチェーンを活用した真贋判定システムを導入し、模倣されるリスクを回避しました。
また、この販売の取り組みを通じて、消費者のニーズが、「所有」から「成果への欲求」に変化していることに気づきました。例えば、「この商品は私の体を健康にしてくれるのか?」など、自分に対する成果の欲求です。モノを所有する価値ではなく、モノの利用を通じたベネフィットで対価を得る、マネタイズ手段のイノベーションが必要です。これこそが、AOSデータの志田CTOが語っていたサービタイゼーションです。
製造業のDXには、データを集め、データを蓄積していくプラットフォームが必要です。鯖江商工会議所では、作る側、買う側のデータを集め、蓄積することを決め、各データプラットフォームの機能を比較し、「AOSIndustryDX」の導入を決定し、内部教育なども行ない、データを蓄積することにしました。
6.改善のコツは、人や機械の能力を引き出すこと。DXとは、“データ”と“能力”の掛け算
「電力も脱炭素も可視化する、新しいスマートファクトリーDX」
株式会社シムックスイニシアティブ 代表取締役CEO 中島 高英氏は、 サービタイゼーション事例として、「電力も脱炭素も可視化する、新しいスマートファクトリーDX」について講演されました。
中島氏は、町工場から事業を始め、横浜に1000坪の工場を持ちり、バブル期は20億円の土地の価値でした。ところが、バブルが崩壊して5億円の価値となり、会社の価値が1円に下がるなどの大変な苦労も経て、そこから会社の価値を上げて、10年後に10億円でバイアウトしました。2011年の3月11日の東北大震災の時は、東大で30%の節電に成功し、そこからクラウドサービスの会社にシムックスの評価が上がりました。2022年9月1日からは、シン・オープン・ラボ(https://www.shin-openlab.com/)を新設しています。
どのようにして、1円の企業価値を10億円にしたのでしょうか?
改善を図るため、2種類のムダを定義づけています。「使われてしまったムダ」は、手持ち・運搬・手直し・材料費のムダなどです。「使われていないムダ」には、在庫・動作・管理する人のムダなどがあります。さらに、「使われていないムダ」の中でも、見えないもの、例えば、時間、エネルギー、情報やデータ、そして能力があることを発見しました。時間とエネルギーは相関性があり、時間のムダを無くせば、エネルギーのムダも無くすことができます。この考え方をもとに発展させた取り組みで、資源エネルギー庁長官賞をいただきました。
改善を実行するコツは、能力を引き出すことです。機械の能力や人の能力を引き出すこと、これがDXなのです。FAXをデジタル化してDXと言う人もいますが、DXは“データ”と“能力”の掛け算です。それで余った時間をプレゼントとして受け取り、幸せに使うことが大事です。
ムダの定義とテーゼを決めて、アルゴリズムを作ってムダと判定できるシステムを構築し、サービスビジネスにしていきます。これはAOSデータもやろうとされていることです。“0(ゼロ)”と“1”を、1分毎に判定できるシステムを鯖江商工会議所に導入し、データを改善につなげる、というシステムを提供していきます。
カーボンニュートラルの攻め方は2つ、RE100とEP100です。RE100は、企業が自らの事業の使用電力を100%再エネルギーでまかなうことですが、これは無理です。太陽光発電を作ってください。新電力会社との契約、グリーン証明書発行会社との契約、これは、製造業では全てコストとなります。このため、EP100が大事です。生産性を2倍にする取り組みです。
手段としてDXを取り入れ、カーボンニュートラルをDXで実現することは、会社と現場にとって大きなチャンスとなります。しかし、EP100を実現するには、電力を使わないと仕事ができないことや、品質を落としてもよいのか、という点など壁もあります。測定できないものは改善できない、というのが、日本が実践してきた改善の原則です。だから、まずは、電力の使用量をきちんと測定するというやり方を提唱しています。
我々は、AOSデータ社と一緒に、工場全体の管理システム「Jupiter X」により、リアルタイムでデータを取り、EP100を実現するための最高の指標を実現していきます。これにより、現場にコストダウンや時間を提供することが可能となります。
7.簡単に構築できる、コラボレーション可能なメタバース・プラットフォーム
「Metaverse Industry Use Cases」
本セミナーのために韓国から来日したyellotail社のCPO June H. Hong氏は、「Metaverse Industry Use Cases」について講演をされました。yellotail社は、MXSpaceというメタバースのプラットフォームにより、60~70のメタバースプラットフォームを構築してきた実績があります。
メタバースがこれから10年の間に生活に大きな変化をもらします。大企業と共にARのプロジェクトを実行した経験をもとに、業界の様々なナレッジを取り込み、簡単に構築できるメタバースのプラットフォームを開発しました。
AR、デジタルツインのシステムを企業に提供することで、我々も学びを深め、企業は、マルチユーザで接続して利用できるシステムを求めていることから、コラボレーションが可能なプラットフォームとして開発しました。その場に参加してデータを共有したり、仲間と握手をしたり、現場の作業を共有することができ、生産性を向上させることができます。