AIデータ社、「AIエージェント×AXフォーラム ~創薬・バイオ~」開催レポート

企業データとAIの利活用カンパニー、AIデータ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長 佐々木隆仁。以下AIデータ社)は、8月20日に、政府が戦略的に推進する重要17分野の一つである「創薬・バイオ分野」におけるAI活用とAXをテーマにAIエージェント×AXフォーラムを開催しました。
本フォーラムでは、製薬経営、がんゲノム医療、知財、法制度、AI・データ活用、自律実験など各分野の専門家が登壇。研究・知財・薬事・品質・製造・経営に分散するデータや知識をAIでつなぎ、研究開発から事業化、経営判断までを支える「企業知能」へ変換するための方策を議論しました。AIを単なる業務効率化の手段としてではなく、企業そのものをAI前提で再設計する「AI Native Enterprise」への進化という視点から、日本の創薬・バイオ産業の新たな競争力を探りました。


セッション1

「AI文明時代、日本の創薬・バイオ産業はどう変わるのか 〜AI Native Enterpriseへの進化とEnterprise Intelligenceという新しい競争力〜」

AIデータグループ代表 佐々木 隆仁

AIデータグループ代表 佐々木は、AIを単なるITツールではなく、産業革命にも匹敵す「文明転換」の起点と捉え、創薬・バイオ企業が目指すべき「AI Native Enterprise」の姿を提示しました。研究、知財、薬事、品質、製造、経営などに分散するデータや知識をAIが活用できる形で統合し、企業全体を一つの知能として機能させることが競争力を左右すると指摘。その基盤として「AI Data Platform」を位置づけ、「Strategic Intelligence」「Trust Intelligence」「Organization Intelligence」の3つの企業知能を提唱しました。日本が蓄積してきた研究データや臨床データ、特許、論文、製造・品質管理の知見を企業知能へ変換し、AI Native Enterpriseへ進化することが、日本の創薬・バイオ産業の新たな競争力につながると強調しました。


セッション2

「製薬産業の現在地 ―― 構造変化の先にある、AI時代の経営」

Taka Horii&Co. ファウンダー&CEO(元アストラゼネカ株式会社 代表取締役社長)堀井 貴史 氏

堀井氏は、世界の医薬品市場が拡大する一方、日本の存在感が低下している現状を示し、創薬・バイオ産業を成長産業へ転換する重要性を解説しました。高齢化による医療需要の増大、新たなモダリティの登場、創薬エコシステムの変化などが同時進行する中、経営には限られた資源を「選ぶ(Choose)」、専門化・分散した組織やデータを「つなぐ(Connect)」、患者の安全や信頼を「守る(Trust)」という3つの視点が必要だと指摘。AIには業務効率化だけでなく、部門間の知識やデータをつなぐ役割が期待される一方、患者安全やサイエンスへの誠実さ、説明責任は人が担うべきだと強調し、AIで「変えるもの」と「変えてはいけないもの」を見極める重要性を示しました。


セッション3

「AI Data Platform × 創薬・バイオ、AI Native Enterpriseを実現する企業知能」

AIデータ株式会社 取締役CTO 志田 大輔

AIデータ社取締役の志田は、創薬・バイオ産業におけるAI活用を、個別業務の効率化にとどめず、企業全体の意思決定を支える「AI Native Enterprise」へ進化させる重要性を解説しました。その基盤として、分散する研究・知財・薬事・製造・市場データを統合する「AI Data Platform」を提示。架空の製薬企業を題材に、研究、探索、前臨床、薬事、製造・品質、営業・マーケティングなど各領域のAI参謀が専門的に分析し、AI PMOが部門を横断して全体最適化するデモを披露しました。AIが意思決定を支援し、その判断とプロセスを企業知として蓄積・再利用することで、属人化を解消し、企業の成長につなげる構想を紹介。最終判断は人が担う「Human-in-the-Loop」の重要性も強調しました。


セッション4

「がんのゲノム医療から見たデータ利活用・AXの未来」

株式会社テンクー 代表取締役社長 西村 邦裕 氏

西村氏は、がんゲノム医療を題材に、膨大なゲノムデータの解析・解釈にAIを活用し、一人ひとりに適した診断・治療につなげる取り組みを紹介しました。ゲノム解析技術の進歩により個別化医療が現実のものとなる一方、検査結果の解釈には論文や臨床試験、薬剤情報など多くの情報確認が必要で、医療現場の負担が課題だと指摘。AIで必要な情報を収集・整理し、医師の判断を支援することで負担軽減と医療の高度化につながると説明しました。一方、患者の診断や治療方針では再現性やエビデンスが不可欠であり、AIが最終判断を行うのではなく、医師を支援する存在として活用することが重要だと強調しました。


セッション5

「AIで描く創薬・バイオの『知財グランドデザイン』 ― レイヤーマップから関所マップへ、誰が来ても必ず通る場所を時間軸に配置する」

森田・大谷特許事務所 パートナー弁理士 森田 裕 氏

森田氏は、AIの活用によって創薬・バイオ分野の知財戦略が、発明ごとの単発的な出願から、事業全体を見据えた「知財グランドデザイン」へ変わると解説しました。特許は単に技術を守るためではなく、競合が必ず通る市場・開発上の「関所」を見極め、そこを戦略的に権利化することが重要だと指摘。CAR-TやiPS細胞の事例を通じ、物質特許とは異なるレイヤーに権利を配置することで、分野全体を広く押さえる可能性を示しました。さらにAIを活用し、市場・競合・論文・特許を横断分析することで、研究、経営、知財部門が同じ地図を共有し、いつ・どの権利を取得すべきかを時間軸も含めて設計できると説明。知財業務を「権利化」から「経営戦略を支える設計」へ進化させる重要性を強調しました。


セッション6

「創薬・バイオ・ヘルスケアを加速するデータ×知財×AIの法制度 ~ルールの全体像と実務上の留意点~」

弁護士法人GRiT Partners法律事務所 所長/弁護士・弁理士 吉澤 尚 氏、パートナー/弁護士 鈴木 修平 氏

吉澤氏は、バイオ分野におけるAI活用が「予測・設計・実証」の各段階で進展し、研究開発プロセスそのものを変えつつあると解説しました。タンパク質の立体構造予測や新たな分子設計などの事例を紹介し、AIによる予測と人間による実験・検証を組み合わせる重要性を指摘。一方、AIが生み出す成果の知財化やデュアルユース、研究データを巡る経済安全保障上のリスクにも触れ、規制・標準化、契約、情報管理までを研究開発の初期段階から一体的に設計し、部門横断で対応する必要性を強調しました。
鈴木氏は、改正個人情報保護法を踏まえ、創薬・ヘルスケア分野におけるデータ利活用とAI開発の今後について解説しました。創薬では大量の医療データ活用が重要な一方、本人同意の取得などが課題になると指摘。今回の改正では「統計作成等」の特例により、一定のAI開発などでデータを活用しやすくする方向性が示され、規制の考え方が「入口で制限」から、一定の利用を認めつつ「出口で規制」する方向へ変化していると説明しました。企業側も今後の具体的な要件を確認し、安全にデータを利用・管理できる体制を整えることが重要だと述べました。


セッション7

「バーティカルAIを社会実装するためのデータ基盤 ―知財・研究データ・秘密情報を、企業知能へ変える―」

リーガルテック株式会社 代表取締役社長 平井 智之 氏

平井氏は、特定業界・業務に特化した「Vertical AI」を社会実装するには、AIモデルの性能だけでなく、企業固有のデータ、業務フロー、権限管理、ガバナンスを一体で設計することが重要だと解説しました。創薬分野では、特許・研究・規制・契約・製造などの情報を横断し、AIが選択肢や根拠、不足情報を提示することで、人間の意思決定を支援できると説明。さらに、企業データには文書そのものだけでなく、過去の判断基準や履歴、文脈を蓄積することが不可欠であり、判断結果を次の意思決定へ循環させることで「企業知能」へ進化すると強調しました。Vertical AIの競争力は、外部モデルの選択ではなく、自社固有の判断資産をどれだけ蓄積・活用できるかで決まると述べました。


セッション8

「脱炭素ではない。『脱酸素』が世界を変える。」

BIRD INITIATIVE株式会社 代表取締役CEO 金野 諭 氏

金野氏は、AIが実験計画を立案し、ロボットが実行・分析、その結果をAIが再学習して次の実験へつなげる「Self-Driving Lab(自律実験ラボ)」を、次世代の研究インフラとして紹介しました。米国・英国・カナダなどで進む自律実験の事例や、日本における実験ロボットの活用を示し、従来の「決められた実験の自動化」から、AIが学習しながら研究サイクル自体を回す段階へ移行していると解説。さらに、人間が実験から離れることで酸素などの環境条件に縛られず、新たな研究領域が広がる可能性を提示しました。研究所が単なるコストセンターから、継続的にデータを生み出す「データファクトリー」、さらには新たな価値を生むプロフィットセンターへ進化する可能性を展望しました。


登壇者による特別セッション

特別セッションでは、「日本の創薬・バイオ産業の勝ち筋」をテーマに、データ活用、法制度、知財戦略、AI、研究開発など多角的な視点から議論が交わされました。日本が持つ医療・ゲノムデータなどをAIで活用できる形に整備するとともに、グローバル標準を意識したデータ基盤やルール形成を進める重要性を指摘。また、技術開発だけでなく、社会実装を見据えた知財戦略や標準化、日本が強みを持つ産業ロボットなどを生かしたフィジカルAIへの展開も議論されました。一方、創薬・医療では患者への貢献と信頼を軸に据えることが不可欠との認識を共有。社内に蓄積されたデータやノウハウ、判断履歴を部門横断で活用し、セキュリティと権利を守りながら企業の競争力へ変換することが、AI時代に日本が新たな価値を生み出す鍵になるとの方向性が示されました。
議論を通じて、AIを単なる業務効率化のツールとして導入するのではなく、研究・知財・医療・法制度・経営をつなぐ「企業知能」として実装することが、日本の創薬・バイオ産業が新たな競争力を獲得する鍵になるとの認識が共有されました。


「AIエージェント×AXフォーラム Sep 成長戦略17分野~情報通信編~」

AIデータ社では、9月15日(火)に「情報通信」をテーマとした「AIエージェント×AXフォーラム」の開催いたします。ぜひご参加ください。

  • 詳細・お申し込みはこちら:https://www.idx.jp/forum/sep/
  • 日 時:2026年9月15日(火) 14:00~16:55(受付開始 13:45)
  • 会 場:日経ホール&カンファレンスルーム(東京都千代田区大手町1-3-7 日経ビル6F)
  • 対 象:‐通信キャリア・通信機器・光通信・宇宙通信・半導体・計測分野の経営幹部・事業責任者
    ‐Beyond 5G/6G・NTN・IOWN・Open RAN関連の研究開発・標準化担当者
    ‐政府成長戦略・経済安全保障・宇宙政策に関わる方
    ‐AIを活用した産業DX・組織知能化に関心のある方
AIデータ株式会社について
  • 名 称:AIデータ株式会社
  • 代表者:佐々木 隆仁
  • 設 立:2015年4月
  • 所在地:東京都港区虎ノ門5-1-5 メトロシティ神谷町ビル4F
  • 資本金:1億円(資本準備金15億2500万円)
  • URL: https://www.aidata.co.jp/

AIデータ社は、データインフラと知財インフラを基盤に、20年以上にわたり企業や個人のデータ資産を守り、活用する事業を展開してきました。9,000社以上の企業、90万人以上のお客様から信頼を得ており、データ共有、バックアップ、復旧、移行、消去を包括する「データエコシステム事業」では、BCNアワードで17年連続販売本数1位を獲得しています。
データインフラでは、IDXのクラウドデータ管理や復旧サービスを提供するとともに、経済産業大臣賞を受けたフォレンジック調査や証拠開示サービスを通じて、法務分野でも高い評価を得ています。一方、知財インフラでは、グループ会社の特許検索・出願支援システム『Tokkyo.Ai』や特許売買を可能にするIPマーケットプレイスの構築により、知財管理と収益化を支援。これらを統合し、生成AI『AI孔明TM』によるデータと知財の融合プラットフォームを展開しています。また、防衛省との連携による若手エンジニア育成にも注力し、データ管理と知財保護を通じて社会基盤の強化に貢献しています。