量子コンピュータ時代の競争力は「計算能力」ではなく「データ戦略」で決まる
AIデータ社、「AIエージェント×AXフォーラム ~量子~」開催レポート

企業データとAIの利活用カンパニー、AIデータ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長 佐々木隆仁。以下AIデータ社)は、7月16日に、政府が戦略的に推進する重要17分野の一つである「量子分野」におけるAI活用とAXをテーマにAIエージェント×AXフォーラムを開催しました。
本フォーラムでは、「Quantum Ready Enterprise(量子時代に備えた企業)」をテーマに、量子コンピューティング、知財戦略、社会実装、産学連携などの第一線で活躍する専門家が登壇。AIエージェントと量子技術が融合する未来を見据え、研究開発から事業化、投資判断、セキュリティまでをつなぐ次世代の企業戦略を紹介しました。


セッション1

「Quantum Ready Enterprise -量子コンピュータ時代に企業が準備すべき『次世代データ経営』」

AIデータグループ代表 佐々木 隆仁

AIデータグループ代表 佐々木は、量子コンピュータ時代の企業競争力を左右するのは、量子コンピュータの導入そのものではなく、量子技術を活用できるデータ・知財・セキュリティ・組織基盤を事前に整備することだと提言しました。研究・実験データ、特許、契約、論文、現場知見などが部門ごとに分断された状態では、量子技術の力を十分に引き出せないと指摘。「Data Ready」「IP Ready」「Security Ready」「Organization Ready」の4つを「Quantum Ready Enterprise」の条件として提示しました。また、企業内のリアルデータを整理・関連付けし、AIエージェントが活用できる「組織知能」へ変換する次世代データ経営の重要性を解説。量子コンピュータの実用化を待つのではなく、今から自社データの棚卸しと小規模な量子活用プロジェクトを始めることが、量子時代の競争力につながると強調しました。


セッション2

「AI Quantum Industry Data Platform―量子産業のデータ・AI・組織知能を統合し、研究開発から事業化・投資判断までを最大化する基盤プラットフォーム」

AIデータ株式会社 取締役CTO 志田 大輔

弊社取締役の志田は、量子産業における課題として、研究・実験・特許・市場などのデータが分散し、組織横断で活用しにくい「データサイロ」と属人化を指摘しました。講演では、これらを統合し、AIで解析・知識化して研究開発から事業化、投資判断までを支援する「AI Quantum Industry Data Platform」の考え方を紹介。架空の製薬企業を題材に、研究参謀、量子解析参謀、知財参謀、共同研究参謀、事業戦略参謀、プロジェクト参謀がそれぞれ専門的に分析し、最終的にAI PMOが全体最適化するデモを披露しました。研究成果を市場・知財・契約・投資判断へつなぎ、得られた知識を次のプロジェクトへ再利用することで、意思決定の高速化と属人化の解消を実現。量子時代の競争は、量子コンピュータの完成を待つのではなく、今から「Quantum Ready Data」を整備することから始まっていると強調しました。


セッション3

「AIエージェント時代の量子特許分析 〜特許情報から、先端技術と競合動向を読み解く〜」

リーガルテック株式会社 代表取締役社長 平井 智之 氏

平井氏は、生成AIの進化により特許出願のスピードと件数が急増する中、特許を単なる「技術を守る権利」ではなく、将来の競争領域を先読みし、研究開発投資を回収・再投資するための戦略資産として捉える重要性を解説しました。特に量子分野は、技術の専門性が高く、用途やプレイヤーも分散しているため、従来の人手による特許検索・分類・競合分析には多大な時間と専門知識が必要だと指摘。そこで、AIエージェントが自然文から検索式を生成し、特許検索、技術分類、企業比較、注目特許の抽出までを短時間で実行する「My Tokkyo.Ai」の活用を紹介しました。量子鍵配送(QKD)を例に、日本企業の技術優位性や主要特許、共創状況、次に調査すべき領域までAIが分析するデモを披露。今後は検索技術そのものよりも、AIが提示した結果をどのように研究・事業戦略へ生かすかが競争力を左右すると述べました。


セッション4

「量子技術の社会実装を成功に導くポイント」

デロイトトーマツサイバー合同会社 マネージングディレクター 松尾 正克 氏

松尾氏は、量子技術を研究成果で終わらせず社会実装へつなげるためには、技術開発と並行して法規制、規格、知財、代替技術、投資戦略まで見据える必要があると解説しました。製品化の段階で法規制違反が判明すれば大きな手戻りにつながるため、PL法や欧州サイバーレジリエンス法、関連規格などを早期から考慮する重要性を指摘。また、コア技術だけでなく、実際の利用場面で生じる課題を押さえる「周辺特許」の戦略的な取得が社会実装の成否を左右すると説明しました。さらに、QKDとPQCのように競合・代替する技術を排除するのではなく、用途に応じて融合・棲み分ける発想も提示。量子技術とAI、特にフィジカルAIを掛け合わせ、投資を呼び込める大きなイノベーションへ発展させる視点が重要だと強調しました。


セッション5

「量子コンピュータの産業利用を加速するAI・量子共通基盤プロジェクト」

株式会社KDDI総合研究所 量子基盤室 室長 斉藤 和広 氏

斉藤氏は、量子コンピュータの現状と産業利用に向けた課題を整理し、KDDI総合研究所が進める「AI・量子共通基盤」について紹介しました。量子計算は最適化、機械学習、化学計算などで高速化が期待される一方、現状は専門知識が必要で、用途に応じた計算機の選択や不安定なハードウェアの運用が大きな障壁になっていると指摘。そこで、量子の専門家でなくても適切な計算資源やアプリケーションを利用でき、将来ハードウェアが進化してもアプリケーションを大幅に作り替えずに済む、いわば計算基盤の「TCP/IP」のようなミドルウェアを目指していると説明しました。まずは最適化や化学計算を対象に実証を進め、AIと量子が共存する次世代インフラとして、産業界で手軽に量子計算を活用できる環境の実現を目指すと述べました。


セッション6

「量子技術の社会実装に向けた戦略立案へのヒント」

独立行政法人工業所有権情報・研修館 知財戦略エキスパート 戸﨑 善博 氏

戸﨑氏は、量子技術の社会実装を事業・技術・知財の「三位一体戦略」から捉える重要性を解説しました。量子分野では特許・論文が急増し、日本も世界有数の特許出願国である一方、実用化には技術開発だけでなく、狙う市場やビジネスモデル、連携パートナーを定め、それを支える知財・契約戦略を設計する必要があると指摘。量子コンピューティングの発展を見据え、オープン領域、競争領域、共創領域を見極めながら、自社がバリューチェーンのどこで価値を生み出すかを考える視点を提示しました。さらに、AIと量子の融合が進み、AIが古典・量子計算を最適に使い分けることで、量子計算を業務成果へ変換するエコシステムが形成される可能性を展望。社会実装に向け、知財を経営戦略と一体で活用する重要性を強調しました


セッション7

「Quantum Safeの最新動向と実用的なシステム」

NTTドコモビジネス株式会社 イノベーションセンター主査/耐量子暗号エバンジェリスト 森岡 康高 氏

森岡氏は、量子コンピュータの進化によって現在の公開鍵暗号が解読されるリスクを踏まえ、「Quantum Safe(耐量子安全性)」への移行が企業にとって重要な課題になっていると解説しました。中心となるPQC(耐量子計算機暗号)への移行は、暗号アルゴリズムの置き換えだけでなく、認証基盤や証明書、ゼロトラスト、デバイス認証、API、業務アプリケーションなど幅広いシステムに影響すると指摘。各国が2035年を意識した移行を進める中、早期の準備が必要だと説明しました。さらに、SIMカードを活用し、PQCによる鍵交換と軽量な相互認証、暗号通信を実現する実証システムを紹介。処理能力の限られたエッジデバイスでも利用できる仕組みを示し、PQCとQKDを適材適所で組み合わせる次世代セキュリティの方向性を提示しました。


セッション8

「量子関連の技術動向と理化学研究所の取り組み」

理化学研究所 量子コンピュータ研究センター 井門 孝治 氏

井門氏は、世界的に量子関連の特許・論文が増加し、量子技術が研究段階から社会実装へ移行しつつある中、日本が持つ技術力を産業競争力へつなげるための産学連携の重要性について解説しました。量子コンピュータ、量子通信・暗号、量子マテリアルなど各領域で研究開発が活発化し、日本は量子関連特許で世界でも高いシェアを持つ一方、海外ではスタートアップが積極的に特許を取得しているのに対し、日本では大企業が中心という構造的な違いを指摘。政府間の国際協力も拡大する中、優れた研究成果を事業化につなげるには、研究機関と企業が連携し、技術移転や知財活用、人材交流を進めることが重要だと説明しました。量子技術の社会実装を加速する上で、研究成果を産業界へ橋渡しするエコシステム構築の必要性を示しました。


登壇者による特別セッション

特別セッションでは、量子技術の社会実装を巡り、知財戦略、データ活用、産学連携、量子セキュリティなどをテーマに意見交換が行われました。中国企業が将来の用途を先読みして特許を取得している事例を踏まえ、研究成果が出てから出願するのではなく、将来の事業像や市場を見据えて知財ポートフォリオを構築する重要性を議論。また、AI活用では、公開情報だけでなく、企業や研究機関が持つ暗黙知や非公開データを形式知化し、安全に活用することが競争力につながるとの見解が示されました。さらに、量子コンピュータの進展に伴う暗号解読リスクにも触れ、PQCへの移行だけでなく、IoT・ロボットなどエッジ領域への対応やQKDとの組み合わせも重要と指摘。議論を通じて、量子技術を「将来の技術」として待つのではなく、データ・知財・セキュリティ・組織の準備を今から進め、自社の事業成長と競争優位につなげることが「Quantum Ready Enterprise」への第一歩であるとの認識が共有されました。


「AIエージェント×AXフォーラム ~創薬・バイオ~」

AIデータ社では、8月20日(木)に「創薬・バイオ」をテーマとした「AIエージェント×AXフォーラム」の開催いたします。ぜひご参加ください。

  • 詳細・お申し込みはこちら:https://www.idx.jp/forum/aug/
  • 日 時:2026年8月20日(木) 14:00~17:30(受付開始 13:45)
  • 会 場:日経ホール&カンファレンスルーム(東京都千代田区大手町1-3-7 日経ビル6F)
  • 対 象:創薬企業、バイオ企業、研究開発・創薬・データサイエンス部門、経営企画・DX・新規事業担当、研究機関・大学関係者
  • 参加費:無料
AIデータ株式会社について
  • 名 称:AIデータ株式会社
  • 代表者:佐々木 隆仁
  • 設 立:2015年4月
  • 所在地:東京都港区虎ノ門5-1-5 メトロシティ神谷町ビル4F
  • 資本金:1億円(資本準備金15億2500万円)
  • URL: https://www.aidata.co.jp/

AIデータ社は、データインフラと知財インフラを基盤に、20年以上にわたり企業や個人のデータ資産を守り、活用する事業を展開してきました。9,000社以上の企業、90万人以上のお客様から信頼を得ており、データ共有、バックアップ、復旧、移行、消去を包括する「データエコシステム事業」では、BCNアワードで17年連続販売本数1位を獲得しています。
データインフラでは、IDXのクラウドデータ管理や復旧サービスを提供するとともに、経済産業大臣賞を受けたフォレンジック調査や証拠開示サービスを通じて、法務分野でも高い評価を得ています。一方、知財インフラでは、グループ会社の特許検索・出願支援システム『Tokkyo.Ai』や特許売買を可能にするIPマーケットプレイスの構築により、知財管理と収益化を支援。これらを統合し、生成AI『AI孔明TM』によるデータと知財の融合プラットフォームを展開しています。また、防衛省との連携による若手エンジニア育成にも注力し、データ管理と知財保護を通じて社会基盤の強化に貢献しています。